ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

けちんぼ2(ss)



切れたペンダントの鎖を新調した飛段は店を出てからぼられたことに気がついた。計算が苦手な飛段でも気がつくほど釣銭が少ない。何度も数え直した末、飛段は大いに腹を立てて店内に戻ったが、店主はしらを切る。おおかたお客さんが自分で落っことしたんでしょうよ、あるいは最初から財布の中が寂しかったのかもしれませんがね。ふくれっ面をして待ち合わせ場所に現れた相棒を角都は訝るが、訳を聞いて馬鹿にしたように鼻を鳴らす。釣銭をその場で確かめなかった貴様が間抜けなのだ、しかもはした金を惜しんで店に戻るとはみっともないにもほどがある。飛段はますますふくれる。いつもカネカネうるせぇくせになんだぁてめー、大体オレぁてめーと違って疑い深くねぇんだよ。まったく金に縁がない奴だ、と相棒をせせら笑っていた角都は、ふと相手のうなじに汚れた指のあとがついていることに気づき、笑みを引っ込める。なんだそれは、と尋ねる角都に知らねえよと返した飛段だが、無意識のように首をこすりながらぶつぶつ呟く。くそーあんにゃろ鎖の長さを計るからってベタベタ触りやがって、ふところまで手を入れてきやがったけどありゃきっと財布を探してたんだな。角都は表情を変えなかった。眉を少し上げたがそれきりだ。特に感情をあらわにすることなく角都は飛段に件の店を尋ねると、そこへ普通に入っていき、普通に出てくる。金は取り戻したぞ。言いながらちらりと見せた拳には多くの札が握られていて飛段は驚く。オレぁそんなに払わなかったぜ。奴が自分で寄こしたのだ、騙して悪かったと悔いたのだろう。へえー、と飛段は感心するが、すぐにニタニタと相棒の脇腹をつつく。はした金なんて言ってたけどわざわざ取り戻しに行きやがって、ホントは惜しかったんだろう、ケチな野郎だぜまったく。角都は返事をせず、金を隠しに突っ込むと指の関節にこびりついた血や髪の毛を目立たぬようにコートで拭う。飛段の言葉を否定するつもりはない。角都がケチなのは本当だからだ。