ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

そこはかとなくセクハラ(ss)



路傍に、小屋と呼ぶのもはばかられるようなバラックがあった。作物の無人販売所だ。飛段がまずとっとと走っていき、中を覗いて、かくずーブドー、と幼子のような声を上げる。ゆっくり到達した角都はまず金入れらしいブリキの箱を振ってみるが、無音だ。空の籠がいくつもあるところを見ると、誰もが金を払うことなく葡萄を持ち去ったらしい。小さな屋根の下、そこだけはいやに頑丈に作られた売り台に飛段は腰をおろし、早くも葡萄を食べ始めている。まだらな色をした不揃いの粒は市場からはねられたものなのだろう。角都も並んで腰をおろし、マスクを外して、籠の葡萄に手を伸ばす。野生種なのか種が多い。むぐむぐと咀嚼していた飛段が、種ばっかりで食いづれぇなァ、と感想を述べる。口当たりのいい種などあるか、と角都は返すが、まるでアレのことを話しているような気がして居心地が悪くなり、種がうまかったら食われて子孫を残せん、まずくて当たり前だろう、などと更に穴を広げるようなことを付け加えてしまう。種って全部が全部まずいのかよ、と指を舐めながら飛段が尋ねる。うまい種だってあんじゃねーの?知らん、と答えながらうっかり相棒の体液の味を思い出し、ついでにそのときのあれやこれやまで振り返ってしまった角都は、慌てて葡萄を何粒も頬張る。皮も種もいっしょくたに飲み込む角都に飛段は呆れ、ガツガツすんなよォ、とたしなめる。ブドーは逃げねぇんだからゆっくり食えっての、まったくテメーは腹減ると我慢ができねぇんだからなァ。自分の性癖をあてこすられているようで酸っぱい顔をする角都の口元に、飛段は皮を剥いた葡萄を差し出す。甘い汁気の中に種をしっかりと内包する、半透明の葡萄の粒を。