ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ずるい生き物(ss)



ビジネスホテルの小さなテレビで環境問題の番組を放映している。アホらしい、と飛段が笑う。人間がいなくなりゃ環境なんざすぐによくなるぜ、どいつもこいつもジャシン教に入信すりゃいいのによ。バカ、そいつらが言っているのは人間にとって都合のいい環境を作るという話だ、と返しながら角都は飛段の理論に半分は賛成している。人類が絶滅して悲しむ生物はいなかろう。植物が生い茂り、虫が増え、弱肉強食が徹底し、食物連鎖が自然の均衡をつくるだろう。人が滅びたらジャシン教とやらの存在意義もなくなるんじゃないか、とからかう角都に飛段は、テメーの好きな金も滅びるぜ、と応える。自分たちを滅びる側に数えていないS級犯罪者たちは狭いベッドに互い違いに横になり、危惧される未来について上機嫌でやり取りを続ける。まったくのところ、人類が滅びようと滅びまいと二人にとってはどうでも良かったのである。