ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

恥ずかしい(ss)



尾獣の移動線上にたまたま位置していたその不運な町では多くの建造物が倒壊し、角都と飛段が訪れたときには復興の真っ最中で、そこらじゅうで工事が行われていた。尾獣の情報を求める角都が住民たちから話を聞いている際にもあたりには騒々しい工事音が響き渡り、耳を聾する騒音と立ち込める砂ぼこりに飛段は苛立ちを募らせた。おいおいそんなに詳しく聞く必要あんのかよ、やりあってみなきゃそいつの力なんてわかんねーだろォ?備えあれば憂いなしだ、貴様のような戦い方をしたら心臓がいくつあっても足りん。オレがいるから大丈夫だってェ、テメーの手は借りねーからよォ。話にならん、と角都は相棒を無視することにする。激しい騒音の中、飛段は耳を貸さない相棒にしばらく文句を垂れ流すが、無視されていることに気づくと、騒音をいいことに日頃なかなか言えなかった不満をぶちまける。金への執着から閨での性癖までこきおろしても角都は何も言わない。これは本当に聞こえていないのかもしれない。そう飛段は考え、自分の中に封印していた本音まで口にし始める。調子に乗んなよコラ、テメーは知らねーだろーがオレぁずっとずっとテメーに惚れてんだぞ、こんなにテメーに惚れてくれる奴なんて他にいやしねーぞ、だからもっとオレを大事にしやがれバーカ。敏い耳ですべてを聞いている角都はだんだん恥ずかしくなってくる。言われている内容はもちろん、騒音で自分の繰り言がかき消されると思っている相棒の暢気さも恥ずかしいし、その繰り言をもっと聞きたいと思っている自分のめでたさはさらに恥ずかしい。