ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ヨバイ(ss)



夜中、部屋で角都のことを考えていたら、ひどくむらむらしてきた。いかついジジイのくせに服を脱ぐと傷だらけのところなんかグッとくる。いつも大威張りの奴が一人で無防備に眠っている姿を想像したオレは辛抱たまらず、パンツ一枚の格好のまま足音を忍ばせて奴の部屋へ向かった。ノブを握ってそっと回し、音をたてないようにドアを少しずつ押し開く。カーテンが開いていて明るい月光が差し込む中、相棒はベッドに仰向けになっている。こういうのってなんて言うんだっけ、そうだ夜這いだ夜這い、とオレは気持ちをはやらせつつ、今度はドアを閉める作業にかかる。開くより閉める方が難しい、というのは枠にドアを戻すときにどうしても音がするからだ。オレは時間をかけてドアを枠に収め、回したままのドアノブを少しずつ元に戻していく。コッ、とかすかな音が手のひらに伝わる。耳には聞こえていない、大丈夫だ。オレは念のためにそのままの姿勢でしばらく動かずにいて、それからそっとノブを離し、ふーと肩で息を吐いて、ベッドを振り返ったら相棒が上半身を起こしてこっちを見ていた。いつからそうしていたのか知らないが、オレはずいぶん長い時間をかけてドアを開け閉めしていたからその半分ぐらいは見られていたかもしれない。かたまるオレに相棒がうっそりと尋ねる。何やってんだお前。夜這いだけど。正直に答えると、相棒は頭を掻いてあくびをし、ずいぶん古くさい言葉を使うんだな、と言った。俺を夜這ってどうするつもりだ。や、ぎゅってしてチューして舐めたり入れたりとか。断る、特に最後のは却下だ、と角都が言う。さあさっさと自分の寝床に帰れ。バツが悪くなったオレはしおしおと部屋へ戻ってベッドにもぐりこんだのだが、ようやっと眠気がさしてきたころ妙な息苦しさを覚え、目を開けたら相棒がのしかかってくるところだった。窒息寸前でオレの呼吸器を解放した角都は、お前に正しい夜這いを教えてやるためにわざわざ来てやったぞ、と恩着せがましく言い、さっきオレが述べた流れに「絞め」「叩き」「焦らし」を加えてかなり長い時間夜這った。しまいには搗きたての餅みたいにほにゃほにゃになってしまったオレは、それでも夜這いの真髄を学ぶ。相手の不意を打たないと夜這いは成立しない、要はスタートダッシュなのである。そしてオレは暁一のろまで相手は角都。前途は多難だ。