ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

馬ニンジン(ss)



飛段は鍛錬をしない。ごろごろ寝て頭もろくに使わず(と角都には思える)野菜も食べない。そんな状態では長生きできんぞ。それをオレに言うか角都よ。このように怠惰で我儘な相棒をどうしたら良い方向へ導けるのかと年長者は頭をひねり、ひとつ思いついた策を試すことにする。相棒の足首を押さえて腹筋しろと命じた角都は露骨にイヤな顔をする相棒に、十回腹筋したら一回キスしてやる、と言ってみる。オイオイそんなもんをオレが喜ぶなんて思ってんならとんだお笑いだぜ。言いながら飛段はいそいそと鎌とワイヤーを体から外し、まーどうしてもって言うんならしゃーねーな、と続けてせっせと体を折り曲げ始める。十回ごとに休憩が入る腹筋運動は長く長く続く。とうとう飛段が限界を迎えると、今度は角都が飛段の体を動かし始める。別の動きだが、やはり十回ごとに小休止を入れる。角都も運動をできるだけ長く続けようとがんばる。だいじな相棒のためだ、多少の苦労は仕方がない。