ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

微糖(ss)



雨天の早朝、角都と飛段は通過中の街で雨宿りをしている。粗末な作りの非常階段に身を寄せてうずくまる二人に、寒風になぶられた濡れた落葉がばらばらとふりかかる。と、不意に角都が立ち上がり、すぐ戻る、と言い捨てて階段を降りていく。腕組みをして寒さに耐える飛段は相棒が見えなくなると自分の左隣、ついさっきまで相棒が座っていた場所に片手を置き、縞鋼板に残る温もりを確かめる。角都が戻るころには鋼板はまたキンキンに冷えていることだろう。すぐに失われていくじんわりとした温度を惜しんだ飛段は尻をずらしてその上に陣取るが、足元を鳴らして相棒が帰ってくる寸前には元の位置に尻を戻し、貧乏揺すりをしている。角都は先の場所に腰を据え、少し考える風だったが、そのまま袖から缶コーヒーを出してタブを開け、一口飲んだそれを相棒に手渡す。熱い缶が行き来するたびに二人の口からは白い湯気が吐きだされるが、双方ともに黙ったままだ。左肩と右肩が密着している今、特に話す理由も必要もないので。