ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

シュラフを買う(ss)



店で寝袋を探す角都に飛段が文句を言う。どんなに寒くっても平気で野宿してきたじゃねーか、なのに一人で行くときだけ寝袋買うなんてズリィぜ。あたり構わず大きな声でぼやく相棒を無視し角都は店員と話をする。あの国に行くのならそれなりのものじゃないと凍死しますよ、と店員が出してくる寝袋は素材も上等で見るからに暖かそうだが値も張る。いくつかの候補の前で重さや機能や値段を比べて迷う角都は真剣そのものである。おもしろくない飛段は唇を尖らせ、積んである段ボールを蹴る。なんだよテメーばっかり贅沢しやがって、オレが一緒に行くんだったら寝袋も二つ買うのかよォ。買わん、と角都はにべもない。オイオイひでぇなオレにゃ寝袋なしってかァ?バカが、と品物の縫い目を確かめながら角都はそっけなく返す。貴様がいれば寝袋なぞ不要だろう。上の空のその返事に飛段は段ボールを蹴るのをやめてじっと考えていたが、突然隠しから金を出すと店員に渡し、一番高値のものを購入する。角都は相棒の気まぐれな暴挙に驚くが、ほらよ、と投げ渡された寝袋はしっかりと受け取る。飛段はできるだけさりげなくそっぽを向く。相棒がなぜこんなことをしたのか角都にはわからないに違いない。多分。