ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ときめき(ss)



このところ飛段の様子が変だ。ぽーっとしているかと思えば落ち着きなく動き回り、ニヤニヤしたり顔を赤くしたりしている。好きな娘でもできたか、と角都は考える。なにしろ飛段は二十二歳の若造なのだ。生臭い欲求処理とは異なるときめきに目覚めたとしてもおかしくない。相手は誰だろう、小南ではなさそうだし、そうなるとアジトの近隣に住む女か、それとも男だろうか。心中穏やかでない角都に、ベッドに腹ばいになってぼんやりしていた飛段が尋ねる。おめーさ、いつまでそんなカッコで仕事続けるわけ?あの大名連中が帰るまでは仕方なかろう、まさか黒コートに覆面で警護に当たるわけにもいかんからな。ふーん、とぼんやりと、いかにも心ここに有らずな反応を返す相棒を苦々しく思いながら、角都は乱暴にネクタイを緩め、シャツのボタンを外し、髪を掻き上げる。まったくこのボケッとした顔の裏でこいつは何を考えているのやら。想像もつかない。