ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

闇へ、闇へと(ss)

文中の規制対象の説明文がとある条例文に酷似していますが、まあそんなこともあるかとお読み飛ばし下さい。




国境を通るとき、役人が、この国では社会的規範に反することは取り締まりの対象となりますので気をつけて下さい、と言った。具体的にはどういうことかと尋ねる角都に渡された紙には「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張し、青少年の性に関する健全な判断能力を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあること、また、著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為を著しく不当に賛美し又は誇張すること」とある。関所を出たとたん、つまり何がダメなんだよ、と大きな声を出す飛段に角都は端的に答える。この国では男同士は結婚できない、だから子どもの前でお前の○○に俺の×××をぶちこんだりすると取り締まられるということだな。ハァー?バッカじゃねーそんなのガキの前でするわけねーだろ、ちゃんと草むらとか塀の陰でやってるじゃんオレら。バカ、そこに子どもが通りかかったらどうする。なら宿でしかやれねーのかよ。襖で仕切られたような安宿なら子どもが間違って覗くこともあり得る、つまりこの国にいる以上そんな行為はできん、キスもお預けだな。えええーと裏返った声を上げる飛段をよそに角都は機嫌よく歩を進める。乱れた性が猖獗を極めていたからこそ規制が厳しくなったのだろう、ということは曲がりなりにも発散されていた欲が今は抑圧されて歪み切り、発露を求めているに違いない。相棒との絡みを少し見せてやるだけで大金を払う輩がいるかもしれない、なにせ非合法なのだから。禁止されればしたくなるのが人の常、相棒もよく燃えることだろう。ただの通過点だったはずのこの地は角都に思いがけない収入をもたらすことになりそうだった。







※補足:目に余るポルノなどがあふれているのは確かですが、ここまでメディアが多様化した今マンガを狙い撃ちする無意味さ、決定まで審議を尽くさない拙速さ、ターゲットがマイノリティーへの攻撃に移りかねない危うさ、何より行政が文化に介入することの空恐ろしさを感じています。色ごとに関する猥雑な文化は人間社会に必要なものですし、世の中の犯罪などがそこに起因すると考えるのは乱暴で意図的な早とちりでしょう。問題はもっと複雑です…孤独であったり、他者への想像力が著しく(それこそ著しく!)欠けていたり、必要な支援がなかったり、それらは社会的なことと捉えなければならないのではないか。悪者を作ってそこにすべてを押し付けるようなやり方は、ひとから考える力を奪うと私は思っています。(自分のダメさ加減を棚に上げての呟きですが^^;)