ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

それぞれのラッキー(ss)



角都もいきなり今の姿で世に現れたわけではないと気づいたとき、飛段は大いに驚いた。この体ではない角都を想像したことがなかったからである。多分かなりの昔から角都の容姿は変わりないだろうが、その前の時代も確かにあったはずなのだった。肌に刺青も縫い目もなく、小さな手(なぜか飛段は手をイメージした)はすべすべふっくりしていて、骨格も柔らかかったに違いない。それがしなやかに伸びて鍛えられ、術を体得し、年を経てここまで育ったのだ。オメー、ホントに立派になったなァ。唐突な感想に角都は面食らい、これのことか、と今まさに使用するところだった器官を指さす。そこもだけどよォ、ほかにもいろいろな、と真面目に応える飛段は、仰向けの身を起こし、自分の上へ乗りかかっていた相手の背に片腕をまわして頬に頬を擦り寄せ、もう片手で相手の髪を頭頂からうなじへ梳く。しみじみと慈しまれた角都は、中途半端な体勢のままかたまってしまう。開いた股の間、シーツに押しつけられている飛段の穴は、角都の太く長い指によってすでに柔らかく捏ねられているのだが、そこに件の器官を沈めるにはやや体勢が悪い。けれども優しい手と頬の感触も惜しい。角都は背を丸めて飛段の腿の下へ膝を進め、時間をかけて相手の尻を上げていく。ようやく挿入し、さて動きだしたときに、はっふっと息をついた飛段が今度は、あーでもオレ今のオメーに会えて超ラッキー、などと言いだす。対応に困った角都は曖昧に、うむ、と言って行為を続行する。俺もだ、と返せば良かったとすぐに後悔するが、わけもわからず同意することには抵抗があるし、飛段は気にしていないようだし、何よりこれ以上中断が長引くのは体に悪い。