ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

陣取り遊び(ss)



角都が宿に求めるのは屋根と壁、そして床である。今日の宿も野宿に比べれば確かにずいぶん安楽な環境だが、それでもかなり寒い。起きているのも辛いので、飛段はさっさと煎餅布団を敷いて寝支度をする。狭い粗末な部屋の中、それでも窓際よりは奥の方に暖気がこもる。角都と飛段は互いに互いを窓際に押しやって我が身を少しでも暖かい場所に置こうとする。大人気ない攻防の末に強い者が勝ち、飛段はぶつくさ言いながら自分の薄っぺらい布団を頭の上まで引き上げ、足を縮めて丸くなると、すぐさま寝入ってしまう。その後しばらくして自分も眠気がさしてきた角都は、大きな団子状の相棒を布団ごとそっと部屋の奥へ押しやり、その小山に抱きつくようにして布団をかぶる。背のすぐそばにある窓からしんしんと冷気がおりてくるが角都は平気である。そもそも寒さには強いのだ。それに腕の中の行火はこんなにも暖かい。