ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

集中しろ(ss)



ふとしたはずみで行為中でも簡単に注意をそらす相棒に対し、飛段は効果的と思われる攻撃パターンを考え出す。あのヤローそのとき見ているものに気を取られるんだ、だから新聞雑誌はできるだけ遠くへ蹴飛ばすとしよう、テレビは消せれば消すし、消せないときはヤローの背をテレビに向けさせ、それもできないときはヤローの視界をオレで埋めてやろう。その夜、さっそく飛段は相棒に組みつくと頭巾とマスクをむしり取り、相手が読んでいた新聞を背後へ蹴り飛ばすと、相棒の頬を両手で挟んで情熱的にキスをしながら巧みに体の向きを変えさせ、唇を離すとその頭を両腕で自分の胸に抱え込んだ。そのまま仰向けに倒れる飛段の上にのしかかる体勢となった角都は、まんざらでもなさそうに行為を続けたが、背後から聞こえてきた大企業倒産のニュースにふと動きをとめる。またかよ!と慌てた飛段は角都の両耳をつかみ、ぐいぐいと引っ張って相手の注目を取り戻そうとする。いきなり耳にぶら下がってきた相棒を角都は叱ろうとするが、眉を寄せて下唇を突き出し鼻の頭を赤くしている顔を見て、思わず、すまん、と小さく謝る。そう、これは角都が悪い。