ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

つゆにても御心許し給ふ様ならば、それに代へつるにても棄て侍りなまし(わずかばかりでも許してくれるなら、それに代えて命も捨てよう)(ss)



ある日、角都は自分の苛立ちを相棒に向け、しまいには飛段をひどく怒らせた。我に返った今、自分に非があることを知っている角都としては謝りたい。だがどう謝ればいいのかわからない。角都は自分の蔵書を一冊手に取り、その中から言葉を見つけ出そうとする。窓の外には暗く寒い雨が降っている。かじかむ指で落ち着きなくページをめくっていた角都は、その箇所に傍線を引き、開いたままの本を持って、部屋の片隅に座り込む頑なな背中に近づく。膝の上に置かれた本を飛段は床に払い落すが、角都はそのたびにそれを拾い上げ、同じページを開いて相棒の膝に乗せる。とうとう根負けした飛段が、そんなん読めねーよ、と呟く。そこで角都はその言葉の意味を解いて聞かせながらゆっくり相手との距離を詰める。窓の外は雨。室内はますます暗いがもう寒くはない。