ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

幸も不幸もはんぶんこ(ss)

こあん様からのリク「茶柱が立つ。しかも2本」による小話です。こあん様、気持ちの良いお題をありがとうございますヽ(^o^)丿



うらうらとめでたいほどの天気である。角都と飛段は明るい山道を歩いている。花枝を振りかざした子どもたちが喉を鳴らして笑いながら二人を追い抜いていく。辻の道端に石の祠と魔除け札が立っている。小さな集落の中ほどには茶屋があり、まず角都が、続いて飛段が店先の縁台に腰をおろす。朝の喧嘩以来いつもより更にむっつりと押し黙っている角都を、めんどくせえ奴、と飛段は考え、居心地の悪い空気をかきまわそうとして貧乏揺すりをする。少し離れて座る二人の間に茶碗を二つのせた盆が運ばれてくる。すぐに手を伸ばした飛段だが、少し躊躇をし、自分から遠い方の茶碗を引き寄せる。相棒の不自然な行為に目をとめた角都は残された方の茶碗を取り、その中に浮かぶ二本の茶柱を見てかすかに眉を上げる。ずずー、と音を立てて自分の茶をすする飛段は素知らぬ顔をしているが、空で円を描くトンビに気を取られた隙に自分の茶に茶柱を投入されるとこちらもかすかに眉を上げる。二つの茶碗の中で一本ずつの茶柱がぷかりぷかりと暢気に揺れる。上空ではトンビが鳴き、角都と飛段の前に広がる山肌からは今朝がたの雨が天に向かって白い綱のように立ちのぼっている。