ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

精を出す(ss)



情報収集のために滞在した宿で、日がな一日何もせずダラダラしている相棒に俺は小言を言った。だらしない奴め、何もせずにいるとそれが習い性になってしまうぞ、鍛錬でも掃除でも読書でも何でもいいからしろ、わかったな。あーはいはい、と気乗り薄そうに応える相棒の頭をぽかりと叩いて俺は出かけたのだが、夕刻に帰ってみると、果たして相棒は朝見た姿のまま畳の上でごろ寝をしている。腹を踏んで起こし、今日も何もせずにいたのかと叱りつけると、腹を押さえた相棒がオイオイひでーなァと文句を言う。オレぁいちんちじゅう精を出してたんだぜ、おかげでへとへとだっつーの。何に精を出していたのか尋ねると、カミにだよ、と即答される。きっとあの妙ちきりんな宗教儀式をやっていたのだろうとムッとしながらも納得し、散らかったままの部屋を見回した俺は、満杯になっている屑籠に気づく。ちり紙を丸めたものがこんもりと山になっており、妙な匂いが漂ってくる。無駄づかいされたちり紙を凝視するうち、先ほどの相棒のセリフが俺の腑に落ちてくる。なるほど、相棒は一日中カミに精を出していたらしい。じっと動かない俺の背に、せせら笑うような相棒の声が飛んでくる。だってテメーが何でもいいからしろっつったんだぜ、これも鍛錬だろ鍛錬、なァ?俺はゆっくり相棒を振り返り、そうだな、と言ってやる。何でもいいからしろと言ったのは確かに俺だ、ならばその鍛錬とやらの成果も見せてもらわなければなるまい、なァ?