ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

何食わぬ顔(ss)



閉店間際のスーパーマーケットの食料品売り場で、飛段が試食品をあさっている。両手の籠に特売の卵と醤油とサラダ油を詰め込んだ角都が早く来いと急かしても動じず、これが一番うめえぜ、と焼き肉を楊枝で刺したものを運んできて角都の覆面をずらす。叱るのも面倒臭くて肉をぱくりと食べた角都は相棒の口元が肉汁で汚れているのに気づき、すばやくそれを舐めて取る。覆面をちゃんと直せ、焼き肉が気に入ったのならたれを一瓶持ってこい、肉もだ、ぐずぐずするな、と角都は指示を飛ばすが、肝心の飛段はまた違う試食に気を引かれている。コラさっさとしろ、と角都は押し殺した声で怒る。相棒の行儀が悪いのでまわりの客がさっきから年長者の角都をじろじろ見るのだ。居心地が悪くてしょうがない。