ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

負け戦(ss)



巨樹の根に腰をおろして雨宿りをしながら、ひとが何を考えているかなどわかるわけがないだろう、と角都がさもバカにしたように言う。貴様の儀式は感覚を共有するかもしれんが思考はまた別なはずだ、バカも休み休み言え。バカはテメーだ、と飛段も負けずに言い返す。オレにゃわかるんだよ、知ったような口をきくと後悔するぜ、角都よ。ならば俺が何を考えているか当ててみろ。ああ、そんじゃやらせてもらうぜ。…おおかた『雨が止めば良い』とか『金が欲しい』とかそんなことを言ってくるのだろう、それらをみな否定すれば自分の勝ちだ、とたかをくくっていた角都はごそごそと自分の股の間に割り込んできた相棒に急所を引っぱり出されて一気に余裕を失う。今オメー『こいつ何する気だ』って思ったろ。ニタリ、と飛段が笑う。違う?『こんなバカなことは今すぐやめさせてやる』って考えたんじゃないのかァ?ああ違うのか、じゃあハズレだなァ。飛段の攻撃を角都はよく耐え忍ぶ。が、旗色は明らかに悪い。今『さきっぽ舐めてほしい』って考えたろ?なんだ、違うんなら舐めてやれねーなァ、当たってたら舐めてやんのになァ。角都の誤算は二つあった。まず、自分の方が相手の考えを読めると己を過信していたこと。飛段の思考が推測できていたら安易に、当ててみろ、などと言わなかっただろう。もう一つの誤算。角都が思っていたよりどうも飛段は悪辣な人間らしかった。