ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ゆずれない点(ss)



電気屋のテレビでテニスの試合が放映されている。女性のシングル決勝戦、どちらの選手も長身で飛段がヒャーと言う。マジかよこいつらオレよりずっとでけーぜ、こっちの女なんか角都、テメーよりでけーんだとよォ。今どき長身の女など珍しくもない、と角都は興味を示さず特売品の拷問用首輪を物色し続けるが、オイオイこいつ五十九キロってありえねーだろ、という相棒の感想には反応し、頭をテレビに振り向ける。その選手は見目麗しいが筋肉質でたくましく、公称の体重は多分に詐称したものだろう。ずいぶんサバ読んだもんだなーゲハハ、と笑った飛段は、うるさい黙れ、と叱られて驚く。あの女が五十九キロだと言うのならそうに違いないだろう、バカを言うな。いやだってアレはどう見ても七十はあるだろ、つーかなんでオメーが怒んの?怒ってなどいない、呆れているだけだ。いやいや怒ってるだろ。俺は黙れと言った、これ以上騒ぐと貴様殺すぞ。どうにかいつものやり取りに持ちこんだ角都は、なんだよー、と文句を言う相棒に背を向けて首輪に集中しようとする。理不尽だと思われようが構わない。角都としてはあのテニス選手より自分の方が華奢だなどと、断じて認めるわけにはいかない。