ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

くるうくるうと鳴く声(ss)



飛段が体術に長けた相手とやり合っていると背後から爆発音が聞こえ、続いて風と火のかたまりがどっとふくらんできてあたりを飲み込んだ。対戦相手が火だるまになって吹き飛んでいく。飛段は鎌を地面に打ち込んで数秒間持ちこたえたが、二発目の衝撃には耐えられず、結局は鎌もろとも飛ばされた。木々や岩も爆風で飛び散り、障害物に遮られることなくずいぶん離れたところまで飛ばされた飛段は、地面に叩きつけられてからようよう立ちあがる。服はぼろぼろだが体に目立った欠損はなく、つぶれた内臓も修復が始まっている。格好をつけるために、イテーなぁクソォ、と毒づいて、飛段はまだ爆発が続いている戦闘地を見る。あれは角都の火ではなく火薬によるものだ。多分相手側の武器に引火があったのだろう、あれでは誰も助かるまい。数分で焼け野原となった元の森林にとりあえず飛段は歩き戻る。飛段と角都の目標だった大名は忍者を含む大勢の警護を連れていたが、あたりに人の形をしたものは見当たらない。焼け縮れた木々と、ちぎれて散らばった体をまたぎながらやっと到達した爆心地はクレーターのように丸くえぐれ、熱で焼けた地表は乾いて白々としている。徹底的な破壊の跡に飛段はあーあァと声を上げ、そうして何やら不安になった。自分の声への応答がないことに慣れていなかったからである。木と肉の焼ける臭いが鼻をつく。飛段は頭を掻き、クセーなあ、と言おうとしてやめた。文句を言うかわりにクレーターから離れ、そこらじゅうに落ちている人体のかけらをいじってみる。いやいやありえねー、と飛段は考える。硬化した角都がダメージを受けるなんてことは絶対にない、だからこんな死体いじりは無駄に違いない。そう思いながらも飛段の手は死体から死体へ動いていく。ばさり、と羽音を立ててカラスがあたりを飛び交う。カラスは次第に数を増し、死体をついばみ、鳴き交わす。苛立った飛段が鎌を振りまわすと黒いビニールがめくれあがるように飛び立つが、すぐにまた地表へ舞い降りる。飛段はときにカラスを威嚇しながらも死体を検分し続ける。カラスに囲まれ、黙りこくって、汚れた両手でいつまでもいつまでも偏執的に死体をあさるさまは真に死神のようである。