ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ありふれたこと(ss)



まだ空気の青い早朝、角都を抱きしめていた飛段が相棒に向かって、誰かに抱かれて目が覚めるなんてこと今までなかったろ、と言う。にやにやと得意気な飛段と対照的に角都はいつもの無表情のまま、そうでもない、と応える。これまでもあったし、これからもあるだろうな。えーマジかよ嘘だろー、と言葉では疑いながら飛段はいかにも悔しそうに口を尖らせる。いっとき緩んだ腕の力が強く自分を抱き直すのを感じながら、角都は意地の悪い満足を覚える。眠る自分を抱いてくれる者などいくらでもいる。昨日の飛段もそうだったし明日の飛段もそうだろう。明後日の飛段もそうかもしれない。