ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

この者に庇護を与える者すべてに祝福、危害を加える者すべてに災いあれ(ss)



飛段が滝隠れの里へ行く。当初角都は気にとめなかったが、出立の日が近づくにつれソワソワし始める。懐かしさと恨みが混じり合う里に飛段は数日間しか滞在しないが、角都は地図を何度も調べ、記憶と情報に照らして目標に到達するための正しい道を相棒に教え込もうとする。肝心の飛段は、何とかなるってェ、と半分も聞いていない。角都は苛立つが、この相棒にものを教え込むことの困難さは誰よりも自分がよく知っている。考えた末に角都は相棒のコートを取り、赤い裏地に黒い糸で縫いとりをする。なんだそれ、と覗きこむ飛段に角都は短く、迷子札だ、と答える。迷子札ってテメー人をガキ扱いすんのも大概にしろよ、と飛段はぶつぶつ文句を言うが、当日はちゃんとそのコートを着て鎌を背負う。こうして飛段は遠路を行き、仕事を片づけて、帰ってくる。相棒の指によって縫われた滝隠れの聖文字に背を守られつつ。