ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ロマンが見えそう(ss)



宿の風呂が屋上にある。景色を見せるためだろうが、そこまで行くためには踏み面が広い梯子のような粗末な階段を登らなければならない。階段の手前で足を止めた飛段はちょっと先に行ってろと相棒に言い、角都が階段を上り始めるとさりげなくその下へ入りこんで、踏み面の隙間から相棒を―ひらつく浴衣の裾から覗く脚とさらにその奥を―見上げる。見えそうで見えない。と、最後の段に足をかけた角都が動きを止めて振り向き、姿の見えない相棒に向かって、おいお前いったいどこで何をやってるんだ、と呼びかける。必死に上を仰ぎ見る飛段は、あー、と間抜けな声を上げる。気にすんな、今ちょうど見てるところなんだ、ロマンてやつを。