ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

帰る、という意志の形(ss)



片脚が腿のところでちぎれてしまった。ちぎれた部分を合わせてしばらく押さえてみたが、まるでくっつかないので、オレは諦めてその脚を背負った。捨てて行こうかとも思ったが、これだけの欠損になると再生にはハンパない時間がかかる。面倒だが持って帰って相棒につけてもらった方がいい。オレは両手と片脚をフルに使って枝渡りをしたが、森が途切れて渡る枝がなくなったので、しかたなく仕込杖を取りだしてとぼとぼと地べたを歩き始めた。鎌があれば遠くの地面に打ち込みワイヤーで飛んで進むことができたのに、あの野郎はオレの片脚と一緒に鎌まで壊しやがったのだ。こんな状態で明後日までに帰りつけるんだろうか。なんだか暗い気持ちになったので、オレは隠しに手を入れてあの野郎の死骸から奪い取った革袋を引っぱりだし、中を確かめた。色とりどりの丸い石がたくさん入っている。舐めている途中のドロップみたいなやつだ。オレならこんな石よりドロップの方がいいけど角都はけっこう喜ぶ。あの野郎がこれを持っていて本当に良かった、そうでなきゃ手ぶらで帰らなきゃならなかったところだ。皮一枚の下で笑うような角都の喜ぶ顔を想像したら俄然やる気がわいてきて、オレは革袋をしまいなおすとせっせと杖をついた。破れた血まみれの服を着て両手で杖をつくオレの姿は傍から見ればそうとう奇妙なものに違いないが、相棒のもとへ戻れるのなら構うことはない。確かなゴールを目指し、まっしぐらにオレは進んでいく。背中に壊れた鎌とちぎれた脚を背負い、前のめりになって、ピョコピョコすばしこく杖をついて。