ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・スケ4(trash)

やるべきことをやらずに小話を書くダメ人間のさんぽやです。ああ困った、こんなときに限って書くことがすげー楽しい。そう言えば昔からテスト前になると部屋の掃除をするダメ子でした。きっとずっとこのまんまだ…。



<スケッチ 4>


なかなかポージングが安定しない飛段に角都が基本の助言をする。足を、尻をどこに置いたか記憶しろ、あと目線を決めろ、どこを見るか決めておけば頭が固定されるからな。なるほど、と飛段は納得する。その日の飛段は片膝を立て、もう片脚であぐらをかくようにして床に直接座っていた。角都の画材箱から茶色のパステルを取ると、飛段は床に自分の足跡を描き、尻の周りもなぞって位置を残す。床に落書きされるとは思っていなかった角都だが、自分が言い出したことなので黙って様子を見る。パステルを投げて返した飛段は、今度は視線を置く場所を探し、角都の顔を見ることに決める。見る側であったはずなのに、急に見られる側にもなった角都は少したじろぐ。おい、目線は動かないものに向けろ。オメーだってそこにずっと座ってんだからおんなじだろ。議論するほどのことではないし時間も惜しいので、角都はそのままデッサンを始める。飛段はなんとか二十分間ポーズをもたせ、休憩後にもちゃんと同じ体勢を作って見せる。得意気な顔がおかしくて、珍しく角都はモデルの顔の表情までを描きこむ。足元と尻の陰には茶色のパステルで線も入れる。できあがったデッサンは決して出来の良いものではなかったが、角都は隅に日付を記入する。こんなに楽しく絵を描いたのは初めてだったのだ。


→スケッチ5