ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・スケ6(trash)

何書いてんだかよくわからないスケッチ話ですが、書いてて楽しいのでとりあえず続けています。まさに俺得^^



<スケッチ 6>


大柄な見かけによらず、飛段は体が柔らかい。腰をひねったポーズも苦しがらずに軽々とこなす。せっかくのモデルの特性を活かすために俺は骨董屋で家具を買ってくる。座面を跳ね上げると物入れになる木製のベンチチェストというやつで、深い飴色の側面には円に正三角形をはめ込んだ模様が彫られている。背もたれもない素朴なものだが、飛段は気に入ったようで何度も蓋を開け閉めして悦に入っている。俺はポーズを指定する。ベンチに座った飛段は曲げた右脚を座面に上げ、左脚を床におろし、右肘を右の膝にのせて上体を左にひねる。窓に向けられた顔は明るく、何かを追っているのか視線が小刻みに動く。角都、木の枝んとこに猫がいるぜ、ブチで目つきの悪いやつ、ありゃ鳥を狙ってんだろうなァ、あの実がなってるやつは何だよ角都、ブルーベリー?マジで?あー海のほうが暗くなってきたぜ、雲が出てきたし風も吹いてる、こんな晴れてんのに雨になんのかなァ角都よ。特に返事をしなくとも飛段は構わず外の世界の実況中継を続ける。風と葉擦れの音の中、二十分間がすぐに過ぎていく。


→スケッチ7