ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・スケ7(trash)

スケッチ話、とりとめなく続いています。自分でもどんな話だったか確認が面倒くさいので、そろそろどこかにまとめてリンクを貼ろうか考え中です。


<スケッチ 7>


 画材店でバイト中にデイダラに会った。暁会とかいう絵の集まりのデッサン会へ行ったとき以来だ。あのとき奴はこちらのモデルぶりについて、報酬もらうんだからきちんとやれ、とうるさく文句を言ってきた。変な鳥とか虫とかばっかり作っているくせにコイツ本当は真面目な野郎なんだなとオレはひそかに感心したものだった。
 彫塑用粘土をキロ買いしたデイダラは、オレと組んでレジをやっていたイタチに声をかけてモデルをやらないかと誘ったが、イタチは断った。興味がないという一言で、悪いとかすまないとか余分な言葉は一切なし。もともとイタチはそんな奴なんだが、デイダラがムッとしたようだったので、オレは品物を運ぶことを口実に粘土とデイダラを店の外へ連れ出した。
「モデルならオレがやってやるのに」
「お前にはこりごりだぜ、うん」
「オイオイあのときのオレと思うなよデイダラちゃん、オレぁもう角都んとこで何度も」
「もしかしてあれからずっと続けてんのか、まったく角都も物好きだな」
 デイダラのバイクはニンジャとかいう中型で、小柄なデイダラセミのようにそれに貼りついて乗っている。軽自動車のほうが便利じゃないかと言ったら「そいつはクールじゃない」と返された。奴にとってはクールかどうかが判断基準らしい。そのクールなバイクのサドルバッグに粘土を詰めてやりながら、オレはちょっと気になっていたことを尋ねた。
「角都ってなにやってんだろな、仕事してねえみたいだし、ヒモかなんかか」
「前に事故にあって、その補償金で暮らしてるって聞いたことがあるぜ。あいつ体中傷だらけだろ、交通事故にでもあったんじゃないのか、うん」
 トウモロコシのひげみたいな髪をなびかせてデイダラが帰ったあと、オレは店に戻り、いつも通りだらだらと仕事をしながら角都のことを考えた。仕事が終わると同僚が飲みに行こうと誘ってきたが、やめておいた。このところ散財して懐が寂しいし、それに飲んだ翌日は朝がつらい。明日は水曜でモデルの日なのだ。


→スケッチ8