ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ヘアクリップ(ss)



オレたち組んでそれなりに長いから互いのことを何でも知っているんじゃないかと誤解されたりする。知らねーよ、とオレは答える。角都がどんな野郎かなんて。するとみんな不審そうな顔をしてオレをイラつかせる。こんなとき本当にオレは角都のことを何も知らないんだなと思い知らされるのだ。奴の好物がアンキモだってことは知っている。でもそんなことは本人に聞けばすぐにわかることだ。オレの中にはオレがこうだと思っている角都がいるが、最初の一歩で間違えていたらそのあとの考えはみんな間違えた土台の上にのっているわけで、こんなことが奴と組んでいるあいだずっと続くんだろう…。宿の出窓に腰を下ろしてそんなことをつらつら考えていたら、開けっ放しになっている角都のアタッシュケースのポケットにペリカンのくちばしみたいな髪留めがとまっているのが見えた。やれやれ、とオレは出窓から腰を上げ、髪留めを持って風呂場へ向かう。あの野郎また忘れていきやがった、これがないと洗った髪が垂れ下がってきて目に入ったり浴衣を濡らしたりするっていつもぼやいているくせに。ときどき思うんだがオレが角都を理解する日など決して来るまい。奴の行為には慣れるだろうが、ただそれだけだ。