ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・スケ15(trash)

秋が大好きなので、一日一日を惜しむように暮らしています。海の色、山の景色、空気の温度、食べ物、夕焼け、すべてが極上ですね。冬も好きなので、まあ秋が過ぎたら過ぎたで次の楽しみがあるんですが^^



<スケッチ 15>


シュロ縄と粘土を買いに行ったらレジに飛段がいた。先週会ったときにはひどくしょげ返り、なあデイダラちゃん、もしもだぜ、もしも角都になんか持ってくとしたら何がいいだろうなァ、などとぼやいていたのだが、打って変わって今日はやけに上機嫌な様子でニヤニヤしている。ちゃんと角都と仲直りできたのか、と言ってやると、ハァー何言ってんだよバーカだいたいオレたちケンカなんかしてねーし、と返してくるが、目はさまよってるし頬が赤いしでバレバレだ。あんまりわかりやすくて突っ込むのも馬鹿らしくなり、粘土をぶら下げて帰ろうとしたら、飛段の奴がいそいそと駐車場までついてくる。なあなあデイダラちゃん、こないだのオメーの作品、人の体に鳥の頭がついてたアレけっこう面白かったぜ。お前なんかに褒められたって嬉しくねーよ、と答えたものの悪い気はしない。あの作品は動物として単純化した人間をあらわしたもので、鳥の頭にしたのは表情を消すためなんだ、その方が見る側が感情移入できるだろ、オイラあれをシリーズ化しようかと考えてるところなんだけどな、うん。作品解説をするこっちを飛段がじっと見てくるのでいい気持ちになり、さらに話を続けようとすると、その飛段が片手をあげて、ちょっと聞きてーんだけど、と遮ってきた。デイダラちゃんさーサソリって野郎のこと好きだろ、あいつもデイダラちゃんのこと好きだよな、相手が自分のこと好きかどうか、そーいうのってどういうときにわかるんだ?てっきり芸術の話だと思って聞いていたオイラは絶句し、飛段の顔をまじまじと見てしまう。…おい、何でそんなこと思いついたか知らないがオイラとサソリの旦那はそんな仲じゃねえ、残念だがその質問は誰か別の奴にするんだな、うん。ええー、と飛段が頓狂な声を上げる。オレ暁会に二回しか行ってねーけどすぐわかったぜ、なんだテメーら自覚なしかよ、信じらんねー。こんな馬鹿に付き合うほどオイラも暇じゃない。急いでヘルメットをかぶりバイクにまたがるオイラに飛段の馬鹿が、そうそう、と話しかけてくる。こないだの鳥頭も良かったけどよォ、鳥に人の頭をつけても面白いんじゃね?まったくくだらなすぎて聞いていられたもんじゃない。ぼるん、とアクセルをふかしてオイラは駐車場を飛び出す。大通りはトラックで混雑しているが、オイラのバイクはそれを縫って走る。たわごとを忘れるにはスピードが一番だ。サソリの旦那のことも彫塑のことも飛段の思いつきにすぎないんだからさっさと忘れてしまおう。…鳥のボディに人の頭だと…ちっ、面白そうじゃねーか。


→スケッチ16