ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・スケ16(trash)

次ぐらいでスケッチ話を終えようと思います。思ったよりダラダラ続けてしまいました。でも楽しかったのでヨシ!



<スケッチ 16>


今まで角都は自分の絵を誰かに見せようとしたことがなく、描き溜めたスケッチ類も古くなれば平気で捨てていた。紙も板もキャンバスも可燃物であるからゴミに出しにくいものは庭で燃やして始末していた。暁会の作品展が行われることを知った飛段がねだらなければずっとそのような制作を続けていたに違いない。出品を何度もせがまれた角都はとうとう根負けし、三十号のキャンバスに油彩で飛段を描いた。描くうちに興が乗り、ずいぶんと時間をかけたが、かなり描き上げてから形の狂いに気がつき、前の線に引きずられながら描き直すよりはいっそとキャンバス全体を塗りつぶしてしまった。翌週やってきた飛段はそのことを知ると激しく怒り、角都をなじった。相手の剣幕に角都は驚き、めったにないことだが気おされてしまう。憤りの理由がわからないため、怒りかえすことができない。何がそんなに気に障ったのかと尋ねる角都に飛段は、そんなこともわからねーのか、と怒鳴る。あの絵はオレの絵でもあったんだぞ、それを断りもなく消しやがって、せっかくの作品を何だと思ってやがるんだテメー!それは筋が違うと角都はちょっと考える。ちょっとだけだ。自分が感化されてきたことに角都はまだ気づいていない。


→スケッチ17