ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

茶席(ss)



強奪してきた荷の中に茶道具一式を見つけた角都は、ふと興味がわいて茶の真似事をしてみることにし、殺風景な隠れ家の一室に毛氈を敷き茶釜に湯を沸かすといっぱしの粋人気取りで茶をたててみた。毛氈の上にしゃがんでそれを眺めていた飛段もお相伴にあずかるが、口にした茶をさもまずそうに飲み下すと茶席の主人に文句を言う。角都よこいつぁマジいけてねーよ、湯は熱すぎるし混ぜ方もムラだ、もっと落ち着いてゆったりと入れたほうがいいぜ。角都はムッとするが、こらえてもう一度茶をたてる。調子づいた飛段はここでもやかましい。ああーそんなに力を入れんなってホラホラ飛び散ってるぜ湯ゥ入れすぎなんじゃねーの案外ぶきっちょだなテメー。角都は渋い顔のままどうにかたてた茶を口にするが、茶の量が少なかったのか味がそっけない。隣では飛段がうるさくはやしたてる。まずい?まずい?見ててもなんかそんな気がしてたぜ、あーやっぱまずかったのかァゲハハァ。とうとう堪忍袋の緒が切れた角都は茶碗を置いて相棒を捕まえると、まずその口に茶袱代わりの手拭いを押し込み、次は体を二つ折りにして地怨虞でぐるぐる巻きにし、ズボンを引き下げ、丸出しの尻を上に向けて毛氈の上に置く。無粋な貴様に話しても無駄だが説明してやろう、茶席には茶花が付き物だがあいにく花の用意がない、貴様の菊門でもないよりはマシだろう、文化に貢献できることをせいぜい喜べ。抗議のウーウー声を聞き流してその奇妙な花器を部屋の隅へ据え付けると、角都はあらためて茶をたてる。沸いてから少し落ち着いた湯を適量の抹茶に注ぎ、やわらかく茶筅を使っていくと、泡のきめ細かな見目も美しい茶ができあがる。角都は満足する。相棒を料理する手際には劣るが、いやこちらもどうしてなかなかのものだ、我ながら。