ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

本も楽しむ(ss)



題名だけで衝動買いした本が成人向けのものだったので角都は後悔した。購入した書店はすでに遠く返品はできない。成人向けの本を嫌うわけではないが、勢いだけで風情のない陳腐な文章を楽しめるほど角都は若くないのだった。下品なその本を、それでも捨てる前に一読する角都の背後に飛段が寄ってくる。あからさまな挿絵に惹かれたらしい。ページがめくられるたびに身を乗り出し、いつしか相棒の背に胸を合わせ、その肩にあごを乗せるようにして本に見入っている。ぱり、と紙の隅をつまんだ角都は、耳のそばで「あ」と漏れた声に指を止め、少し待ってから次のページを開く。急ぐことはないのだ。つまらない本でも読み方によっては面白いし、少なくとも今角都の背中はほかほかに暖かった。