ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

よみがえる誇り(ss)

※さっきまで外で月食を見ていまして、急いでガタガタ打った話です。ああ、また見に行かなきゃ。



逃げるだけのチャクラをどうにか確保していた角都は、技も力も運も使い果たしてなお戦いに執着する相棒を引きずって冷たい氷雨の中をどこまでも走った。雲が強い風に吹き散らされると雨も止んだが、今度は明るい満月が平地を走る角都と飛段を煌々と照らし出す。追手はなかなか諦めず、やっと見つけた獣穴へ相棒とともにもぐりこもうとした角都がふと空を見上げると月が欠けていた。泥が崩れる狭い穴に潜むうちに月は完全に姿を消す。二人の痕跡を見失った追手もどうやら引き揚げたようである。空気の淀んだ穴の中でチャクラが尽きた飛段は泥まみれのまま眠ってしまったが、さすがに角都は眠ることができず、あたりの気配を探り続ける。やがて再び現れた月は地を白く光らせ、それは暗い穴の中にも及んでくる。相棒の顔が黒く汚れているのを認めた角都は指で拭って汚れを広げてしまい、舐めてきれいにしようとする。負け戦はいつだってみじめなものだが、一番誇らしい部分を整えればみじめさは消えていく。舌を使い終えた角都は出来栄えにまあ満足し、戻ってきたチャクラをゆっくりとめぐらせ始める。傷もじきに癒えるだろう。明日には完全復活だ。