ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

映る(ss)



安ホテルの壁の一面が鏡だった。水銀が浮いたそれの前で強引に組み敷かれた飛段は相手を口汚く罵ったが、角都はかまわず相手の股をバレエダンサーのように大きく押し広げ、容赦なく行為を続けた。何度も突かれるうちに飛段の体はベッドの端まで移動し、やがて頭がマットレスからはみ出たが、やはり角都は頓着しない。しばらく頭をもたげて相手を罵り続けていた飛段だが、とうとう力尽きて首をのけぞらせ、角都の動きのままに揺すぶられる。逆さの視界に立ちふさがる染みだらけの鏡には乱れた自分の顔と体、それにのしかかる相手の、珍しく快楽に歪んだ形相が映っている。鏡越しに見られていることに気づいていないのだろう、油断しきったその様子を飛段はさかさまに眺め、笑いの息を吐く。なんでこんなもんで興奮してんの、オレばかじゃねえの。