ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・Co3(trash)



<カンパニー 3>


やっとつかまえた上司に角都は噛みつくが、どんなに目を怒らせ凄みを利かせても所詮は電話越し、すまなそうではあるがどこかほっとしている相手の声音に自分の負けを認めざるを得ない。さすがにお前の仕事は完璧だ、と上司がほめそやす。ハタケ先生もことのほかお喜びで、他社からの話も断ってウチでの執筆を続けてくれることになった、やはり今現在の写真を使うことで先生のエッセイの説得力が増す、お前のおかげだ。たわごとを並べるのも大概にしろ、と角都は吐き捨て、ホテルの窓から外の喧騒をにらみつける。とにかく俺はすぐに帰国するからな、大体写真などネットで探したものをちょっと加工すればいくらでも望みのものが作れるだろうが。そんな小細工がばれたら先生の機嫌を損ねてしまう、と上司が返す。ここでハタケ先生に見放されたら廃刊になりかねない、たまたまそっちにお前がいてくれて本当に運が良かったんだ、頼むからあとしばらく頑張ってくれ、そうそう今月号の売り上げは一割増しで上からの覚えもいい、次のボーナスは楽しみにしてくれていいぞ。角都は深く息をつく。会社勤めの身、どんなにたてついたところで命令は絶対なのだ。ではせめてガイドを変えてくれ、と角都は譲歩する。あの野郎は癇に障ってどうもいかん、語学がイマイチでもいい、別の奴をよこしてくれ。善処するがあまり期待を、と上司が言うのをしまいまで聞かずに角都は受話器を置き、うんざりしたように再度ため息をつく。通りで待っていたはずのガイドが部屋のドアを叩いているのだ。おい角都、ぼろカメラ持ってさっさと行こうぜ、なんだなげーなァ便所かァ?下痢してんじゃねーだろなオイ、ゲハハァ!