ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・Co10(trash)

まいにちまいにちぼくらはてっぱんの〜てな感じで、こんな状態で定年まで働いたらつまんない人生になっちゃうよとぼやいたりしてるんですが、毎日太るほど食べて熱い風呂に入って布団で寝てあまつさえネットで遊んでいるんですから、考えてみりゃこんな恵まれた環境はそうそうないんですな。


<カンパニー 10>


バイクは朝霧の中を走っていく。内戦の名残か道路にはあちこち穴があいており、飛段はいつもの無謀な運転を控えて注意深くハンドルを切る。ひいやりとした細かな水の粒があたりにたちこめている。自分は新聞紙を腹に巻いてきたが客はどうだろう、と飛段は案じ、寒くねーか、と背後へ問いかける。寒かったらもっとオレにくっつけよ、遠慮すんなよ。返事はないが、飛段の腹にまわされた腕がややきつく締まり、背の圧迫感も増す。道端の古い寺院が霧の中でおぼろな朝日を浴び、髪に花を飾った老婆がその門前で掃き掃除をしている。ぼうと橙色に輝いて焚火があり、まわりにしゃがむ子どもたちがバイクに向けて手を振っている。あの寺は学校もやってるんだ、この辺に住んでる奴らみんなで掃除したり建物直したりするんだぜ。背に伝わる動きから客がその光景に見入っていることがわかり、飛段はさらに速度を落としてそこを通過する。ナツメヤシの林、サトウキビの畑、地表の塩を舐める牛、燃料として干されている家畜の糞。霧が輪郭をあいまいにしているとはいえ見ればわかるものばかりだが、飛段はいちいちそれらを背後へ知らせながらバイクを走らせる。うつくしい朝。