ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・Co12(trash)



<カンパニー 12>


悪ふざけのように体をつないだあとも相手の態度が変わらなかったので、角都は利己的に安堵した。依存や干渉を嫌う角都はいくどかの失敗を経て、今では商売の相手とのみ関係を持つようにしていた。今回の関係は単発的なものだが仕事が絡んでいる。飛段を辞めさせるのは簡単だが次の通訳とガイドと運転手を見つけるのは面倒だ。野卑な狂信者だが飛段は角都にとってそれなりに使い勝手の良い男なのである。しかし当の角都は、自分が忍耐強いから飛段は働いていられるのだと考えている。何が楽しいのかしょっちゅう喧嘩をふっかけてきたり儀式と称して地面に寝転がったりする変人に角都はずいぶん我慢しているのである。今日も飛段が地面に棒きれで地図を描くのをしゃがんで眺めていたら、突然飛段がひょいと角都の鼻の頭を舐め、ぎょっとした相手の顔を見てゲハゲハ笑い出した。なんだこいつは、と角都は当惑する。意味なく他人の鼻を舐めて笑うとは、犬じゃあるまいし。