ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・Co13(trash)



<カンパニー 13>


この国ではよく停電が起こる。角都は不便さに辟易とするが、飛段はまったく動じない。電気がなくともバイクは走るし川に漬けた服を足で踏めば洗濯もできる、暗くなったらロウソクがあるし、眠ってしまえば暗くても関係ない、と飛段は言う。だいたいみんな不自然に仕事したり遊んだりし過ぎだぜ、もっとこう、腹が減ればオレンジもいで食って、クソをしたけりゃしてよォ、神が人に欲を下さったんだから欲に従って素直に生きりゃいいんじゃねーの。では金が欲しかったら盗ればいいということか。飛段はさも呆れたふうに角都を眺める。あのさ、お前いっぺん無人島とかに行くといいぜ、金なんか何の役にも立たないって身にしみるからな。それは先程の問いの答になっていないと角都は言いかけるが、隣家の女性に呼ばれた飛段がさあ行こうぜと急き立てるのでそのまま表へ出る。小さな家に住まっているのが信じられないほどの大家族が、老いも若きも一緒に焚火を囲んで賑やかに夕飯を食べている。飛段がおばちゃんと呼ぶ恰幅の良いその女性は、大きな木杓子で煮込み料理を皿に盛るとそれを飛段と角都に渡して寄こす。やや気が引けている角都に、金を払いたきゃ払ってもいいんだぜ、と飛段が意地の悪いことを言う。もうあたりはうす暗いが、焚火のまわりの人々の顔は明るく照り映えている。