ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・Co14(trash)



<カンパニー 14>


珍しく雨が降っている。角都はそわそわと運転手に電話をかけ、こんな天気に出かけるこたーねーだろ、と呆れる相手に雨の日の魅力を説く。いつも埃でしらちゃけている木々も今日は緑だろうし地面も岩も色が濃いだろう、濡れてはしゃぐ子どもや服を体に貼りつかせた若い女もいるかもしれんぞ。ホントに物好きな野郎だなと運転手はぼやくが、それでも角都の希望通り四輪車をレンタルしてきてくれる。角都は勇んで乗り込み、右へ行け左へ行けと指示を出すが、幹線道路から外れたとたん道は川のようになり、濁った水の中で古い車は動かなくなってしまう。角都はズボンのすそをまくって外に出、力の限り車を押すが、じきに諦めて車内へ戻る。濡れネズミの角都を飛段は容赦なくコケにする。こういうのを骨折り損のずぶ濡れ儲けって言うんだろうなァそう思わねーか角都よォ。うるさい黙れと角都は唸り、シャツを脱いできつく絞るとそれで頭や体を拭き、少し逡巡してからズボンも脱いで絞る。車内は水浸しでガラスがみるみる曇っていく。そこまで脱いだんならパンツも絞れば、と飛段がもっともな助言をする。あたりには誰もいないし、いたとしても車内は見えまい。角都は腰を浮かせて下着を脱ぎ、どうにか格好をつけようと絞ったばかりのシャツを羽織ろうとする。と、座席の隙間に挟まっていたタオルを見つけた飛段が角都を制し、その汚い布切れで相手をごしごしこすり始める。濡れた不快さときまり悪さで角都はされるままになってしまう。やっと雨が上がり道路の水が嘘のように引くと、飛段は車のエンジンを始動させ、でこぼこ道をゆっくりと走らせていく。上機嫌で鼻歌まで歌っている。たまには車も悪くねーな、へへ。生乾きの服を身に着けた角都は難しい顔で腕組みをしている。終始相手に主導権を握られていたことがおもしろくないのだ。だが、確かに悪くはなかった。