ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・Co17(trash)

まだ仕事がつかめず、机の上がすごいことになっています;;環境は悪くないのに能力が粗末すぎて大弱り。一枚の書類を出すのに何度もやり直して、会議では間違えたことを口走り、寝不足で肌もボロボロ、うっかり眠らないように立って仕事をするていたらく;;
がんばらないとできないことってたくさんあるので、とりあえずがんばります。

カンパニも早いところおしまいにしなきゃと思いつつ、ちょっとずつ打ちためていたものを寝ぼけて消しちゃったりして、三回打ち直して、何が書きたいのかわからなくなって、でもとにかく終わらせようとあがきました。なんだか自分の人生のようだ。
とりあえず終えたので、次はカンパニ余談をちょっとだけ書くつもりです(K様、すてきなリクエストをありがとう!)。



<カンパニー 17>


深夜の空港で、入国手続きの行列は長くほとんど動かない。何を審査しているのかカウンターの職員は無表情に書類を眺め、ときおり旅人と問答をしている。角都は自分の旅券に挟んだ書類と証明写真を確かめる。便の遅れにより予定は大幅に狂ってしまったが、主要な打ち合わせは明日の午後以降に設定してあるから問題はない。問題などない、と角都は自分に言い聞かせ、また旅券を開いて書類の確認をする。入国カード、査証申請カード、証明写真が二枚。不備はない。以前この国に半年ほど滞在した際には査証の延長手続きに丸一日かかり、時間を惜しむ角都はずいぶん苛立ったが、同行していた通訳者はホントに一日でできたのかよォと妙な驚き方をした。ここじゃあ一日一仕事ってんだぜ、オメーの申請を受けるのに一日、審査に一日、許可出すのに一日かかるのがフツーなのにオメー超ラッキーだったじゃん。大げさなことを、と思ったあの言葉は存外本当のことだったのかもしれない。カウンターには三人の職員が並んでいるのだが、そのうち一人は写真の糊づけ、もう一人は書類のホチキス止めしかしていないように見える。あれを分散して三つのカウンターを開けば三倍の客がさばけるのに、と無駄に考えながら角都はまたもや旅券を開き、小さな写真を落とさないようビニール製の旅券カバーに挟み込む。前もって宿をとらなかったのは失敗だった、いっそ空港で夜を明かすか、どうせあと数時間で夜が明けるのだから。そんなことを考えてあたりを見回すが、照明がほとんど落とされた屋内には店も食堂も待合所もなく、旅行者用の観光窓口も閉まっている。治安が良いとはいえないこの国で野宿をする気にもなれない。タクシー運転手に宿まで案内させ、そこに言い値で泊まるしかなさそうだ。不機嫌を募らせながら長々と順番を待ち、やっと入国手続きを済ませた角都は、トランクを下げてそこだけ明るい出口へ向かう。深夜にもかかわらず十数人のタクシー運転手が鉄製の柵の向こうで客待ちをしている。当然のことだが見知らぬ顔ばかりで、角都はしばらく立ち尽くし、やがて意を決したようにポケットから携帯電話を引っぱり出す。くそ、と吐き捨てたのはここまで来て相変わらず常識やプライドにしがみつく己を叱咤するためだ。会社を辞め、小さな商会に転職してまでこの国にこだわった自分を今さらごまかしても仕方がない。虫が群がる蛍光灯の下で、角都は以前に組んだ通訳兼ガイド兼運転手に連絡を取ろうとする。脳内で何度も反芻してきた数字の配列を指がゆっくりとなぞる。こんな深夜に電話をかけて何をどう話せばいいのだろう?仕事を依頼してやるから迎えに来い、それともペンダントを返しに来てやったから取りに来いとでも言った方がいいのか?いや、そんな理由はまやかしに過ぎない、会いたいのなら会いたいと言うべきだ、ここまで来て面子など気にしていたら何も伝えられないだろうが。角都は自分を鼓舞して携帯電話を耳に押しつける。珍しく緊張している。受話口からの小さな呼び出し音に集中するあまり、聞き覚えがある着信音が近づいてくることにも気づくことができない。