ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・Co番外(trash)

敬愛するこあん様からいただいたリク「未消化」「追い越し車線」でカンパニ番外を書いてみました。最終話を書く前からこっちを書きたくてうずうずしておりましたよこあん様^^。未消化=角都の内心、追い越し車線=飛段の肩書、というただし書きをつけないと意味不明な話になってしまって申し訳ありません。でも久しぶりに書いていて楽しかったです。エネルギーをありがとうございました。お気が向かれましたら、また恵んでくださいませ!


<カンパニー 番外>


新しい勤め先である暁商会は輸入販売を主としている。純利益が安定していることと、海外ブランチの社員を募集しておりその一つにこの国が含まれていたことを重視して角都は転職先を決めた。現地スタッフは角都の権限で雇用できる。ところが新しく契約社員となった飛段は待遇に無頓着で、契約内容を説明しようとする角都をうるさがった。何でもいいってェ、えっホケン?保険なんかいらねーよ、クビになったって元に戻るだけだしよォ、賞与ってボーナスのことだろ、ジャシン教にゃ寄進制度がないからなァ、カネはあってもいいけど別になくてもかまわねーぜ。ヤシの葉で葺かれた張り出し屋根の下、前夜の飲み食いの跡が残る机で、しかたなく角都はすべての書類を代筆した。できる限りの手当を適用し、通訳や運転手としての加算分を積算すると、飛段の収入はまずまずの額となったが、それを教えてやっても肝心の本人がまったくありがたがらないので角都はムッとした。せっかくの善意が報われず、消化できないもやもやが胸にたまっていく。そんな相手をおもんぱかることなく飛段が、あっそーだ、と頭の悪そうな声を張り上げる。オレの肩書は何だよ、オメーより長くここにいんだからオメーより下ってこたーねーよなァ、オメーって会社のなんなの、課長?んじゃオレは部長ってことでいいかァ。バカバカしいたわごとにつきあえず、角都は相手を無視して書類を書き上げる。何かと忙しく、空港で抱擁して以来特に相手に触れていないのだが、もやもやに任せて今夜は少し無茶をしてもいいかもしれない。そんな薄暗い思いの角都の前で飛段はプラスチックの椅子にひっくり返り、わきを通る隣家の女性に就職の報告をする。おばちゃんオレ会社、カンパニーの部長になったぜすげーだろ、なにカンパニーって仲間って意味なの、んじゃオレたちみんなカンパニーじゃん、こいつ課長でオレ部長、おばちゃん専務なゲハハァ。角都は苛立ちもあらわにペンで机を叩き、飛段にそのペンを握らせて契約書に署名させる。その頭上では鳥が鳥にしかできない方法で空を飛び、足元では犬が腹を見せて身をくねらせ犬であることを楽しんでいた。こうして角都は受け入れられ、思い通りにならない諸々のことがらと悪戦苦闘しつつ、人の生を謳歌することになったのである。