ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

さち(ss)

遅くなりましたが、飛段、誕生日おめでとう。



もう夜も遅い野営地で角都が飛段に風遁を教えると言い出す。基本の印はこう、そうしてチャクラを手のひらに溜めて放つんだ。そう言いながら角都はいとも簡単に風を起こす。焚火の炎がゆらめき、地面にびっしりと散っている桜の花びらが小さな竜巻になって舞い上がる。飛段も真似るがとてもそんな器用なことはできず、ときおりひょろっとした風を気まぐれに起こすだけだ。オレにゃ無理だぜ角都。タイミングが悪いだけだ、よく見てみろ、ほら。角都は相棒の手に自分の手を重ね、何度も術を操って見せる。大きな風、とても大きな風、小さな風、かすかな風。どちらの手のひらから術が出ているのか飛段にはわからない。桜の花びらは風が起こるたびに地面から枝からひるがえって宙を飛び、角都と飛段のまわりに降り積もっていく。明るい月光の下、ゆっくりと時間をかけて、たっぷりと。