ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

なにげに失礼(ss)



飛段は泥酔すると尻を出す。店を出るまではそれなりにちゃんとしているので組み始めた当初は俺も気づかなかったのだが、終日行動を共にするようになってこの奇癖がわかったときにはさすがに辟易とした。たとえば店を出て往来を歩きだし、先を行く俺がふと振り返るともう出している。まくりあげたコートを鎌に引っかけてズボンとパンツを下ろし、さっさとしまえと叱っても「うっせーてめーも出せ」とくだをまき、ぐにゃぐにゃの重たい体でからみついてきたり突然だっと走り出したりする。尻を出したまま「すずしーきもちいー」とわめいているのを無視して立ち去ろうとしたこともあったが「まてよーかくずー、かくずー」と大声で連呼されて諦めた。今日も宙に白いものがぼうと浮いてるなと思えば電信柱に登る相棒の尻である。しかたなく俺はできるだけ目立たぬよう電信柱の陰に立ち、相棒の乱心が収まるのを待つ。数メートル上空から、てめーもやってみろよきもちいーからよー、と暢気な声が降ってきて、通行人がひそひそ笑いながら行き過ぎる。俺は当然黙っている。あんなことができるわけがない。酒で火照る尻を風にさらせばそりゃ良い心地がするだろう。だが尻を出せば前ももろ出しだ。ぶらさがるモノが飛段ぐらい小ぶりならいいが、俺のサイズをあらわにするのは、ちょっと照れくさいじゃないか。