ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

すべて世はこともなし(ss)



まぶたを閉じていても朝日が眩しい。相棒の待つ野営地までやっと帰り着いたのが未明だったので、正直なところまだ眠っていたいのだが、夏至を過ぎたばかりの太陽は早々に上ってくる。諦めて起き出そうとしたとき、ふと視界が暗くなる。雲か、と開いた目に見えるのは太陽に片手をかざす相棒だ。逆光にあってもまだ白い顔をこちらに向け、もちっと寝とけよ、と言う。疲れてんだろ、お天道様にゃオレがフタしといてやるからよォ。空は真っ青、頭上に広がる木々の葉は緑の濃淡を風にひるがえし、虫の羽音が響いて、飛段の手のひらで蓋をされた太陽は俺の目以外の世界を照らしていた。疲労が残る体は痛み、腹も減っていたが、俺は至極満足して再び目を閉じる。気持ちが良かったのである。