ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

わがまま(ss)



木の葉に毛虫がたかっているのを見た角都が露骨に嫌な顔をしたので、オレはちょっとからかうつもりで枝にとまらせた毛虫を振り回して遊んだのだ。そしたら体中が痒くなった。特に左の脇腹がひどく爛れ、オレがそれを掻きむしったもんだから皮膚がぐちゃぐちゃに崩れて熱を持ち、イヤな感じになった。自業自得だと角都は冷たいもんだったが、水が豊富な沢を見つけると野宿の準備を始め、オレが体を洗っている間に服を水に浸して念入りに石で叩き、きれいに洗濯してくれた。角都のコートはでかくて広げると敷物みたいになる。オレが左脇腹を上にして横になると角都が揉んだ薬草の葉を貼り付けてくれた。冷たくて気持ちがいい。何もかもOKみたいだけどオレは面白くない。だって角都がオレを右側に押しやって自分は左側に寝転んでしまった。この体勢じゃいちいち頭を捻じ曲げないと角都が見えない。そりゃ奴が左でオレが右ってのがいつものポジションだ、けどたまには逆になったっていいじゃねーか。起きてそれを訴えると角都が怒る。バカ野郎、俺に洗濯やら摘み草やらさせておいて貴様じっと寝ていることもできないのか、剥がれた薬草をまた貼り付けるのは誰だと思ってるんだ、役立たずめ。雷みてーにピシャリと怒鳴られても諦めず、オレは角都を乗り越えてその左側に無理やり割り込む。そうして落っこちた葉っぱを自分でぺたぺた体に乗せる。うまく貼りつかないが、きっと角都が直してくれるだろう。その角都は体をずらしながらまだブツブツ言ってる。オレは呆れるが知らんぷりをしてやる。いくらわがままな野郎でも相棒なんだ。我慢するさ。