ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

エロティシズム(ss)



もう秋だというのにその国はひどく蒸し暑く、角都と飛段は路上で売られている布きれのような民族衣装を買い込むと、かび臭い安宿の一室でべたつく服を脱ぎすて、買ったばかりの布を広げた。何でも器用にこなす角都は迷いのない動きで黒い布を腰骨のところにきつく巻き、端を腹回りに挟み込む。びっ、と張られた布を内側から盛り上げる尻に下着の線は見えない。飛段もあわててパンツを脱ぎ、相棒をまねて紫の布を巻き直す。人目に立たぬよう頭巾とマスクと背の四遁面を外し、腰から下をタイトスカートのように布で覆った角都は、たくましくしなやかな筋肉を見せつけているのに、飛段の目にはなまめかしく映る。賞金のついた贄を探しに外出しても飛段はぼうっと相棒に見惚れる有様で、当の相棒に暑気あたりを心配されて早々に宿に連れ戻される羽目になる。顔をあおがれ水を飲まされても飛段ののぼせは治らない。おお、と飛段の内なる詩人が賛美の歌を歌う。縫い目に覆われた背、布の下の尻や脚や猛々しい道具、あらわなくるぶし、墨の入った強い腕、盾のような胸と腹、複雑に美しい頭部、すべてを包む熱く浅黒い肌を。美を目の当たりにする喜びとその先にある期待感を飛段はどう呼べばいいのかわからない。角都はそんな相棒を持て余す。粗末なベンチにしどけなくひっくり返った飛段の肌は上気し、危なっかしく巻かれた紫の腰布はいまにも解け落ちそうで、開いた合わせ目から白い太腿が覗いている。しかも飛段は下着をつけていないらしい。双方とも似たような思いを抱きながらかび臭い部屋で相手を眺める。片や蕩けそうに、片や苦虫を噛み潰したような目で。