ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・押しかけ夜ガラス1(trash)

今年のGWはあまり休めず、世の中の連休人たちを恨めしそうに見ているさんぽやです。こんにちは。
カラスの本を買って以降、なんだかそっちの熱が去りません。以前角都も飛段もカラスというネタをひとつ書きましたが、鶴の恩返しって異類婚姻譚なんだなあと考えているうちにそういうネタが書きたくなってきました。押しかけ女房っぽい感じで。
※5/6、S様からいただいたコメントにあった「押しかけ夜ガラス」を題にいただきました。ありがとうございました。


<押しかけ夜ガラス1>

 夜中に突然ガンガンと玄関のガラス戸を叩かれて目を覚ました。いつかはこんな日が来ると思っていたが、いざそうなってみるとオレにはまったく備えがない。しらばっくれるか、それとも逃げた方がいいんだろうか。まごついているうちにまたガンガンと叩かれてオレはさらに浮足立つ。とりあえずズボンをはいて暗闇の中を裏口へ進んだが、途中で空き缶を蹴飛ばしてしまい、そしたら玄関のガンガンが止んだ。どうするか迷った末にオレは結局玄関へ向かい、音を立てないよう引き戸を持ち上げながらそっと開いたら、そこには真っ黒なコートを着たでかい男がぬっと立っていた。これはヤバい。急いで戸を閉めようとしたが、それより早く男が戸を片手で押さえ、オレの抵抗もなんのその、軽くガラリと開け放った。
「さっさと出ろ、のろまめ」
「なん、なん、なんだよテメー」
「俺はカラスだ」
「…ハァ?」
「カラスだと言っただろう。貴様頭は大丈夫か」
 でかい男はオレを押しのけると玄関に入り込み、壁を探って勝手に電気をつけた。ふんぼろい家だな、と呟いてまだ泡食ってるオレを見下ろす。
「お前昨日カスミ網にかかっていたカラスを助けただろう。あれは俺だ。わざわざ恩返しに来てやったんだ、ありがたく思うんだな」
 そのまま無遠慮に家の中へ上がりこみ、廊下を通って居間へ入っていく。おいおい、とわめきながらあわてて後からついて行くオレに、男が暗いぞと唸った。
「俺は鳥目なんだ、明かりをつけろ」


→2