ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・押しかけ夜ガラス7(trash)

ウラウラしい話を書いてガス抜きしたので、落ち着いてカラス恩話の続きに入ります。これももう7話目、そろそろ始末せねば。


<押しかけ夜ガラス7>

 朝、縄張りの点検に行った角都が戻ってこない。仕事が休みの日だからうまい昼飯を作ってもらおうと思っていたのに、もう午後だ。オレは冷蔵庫を漁って竹輪やハムやチーズを食った。すっぽかされて腹を立てていたので、角都が毎晩楽しみにしている燻製のアンキモを平らげてやった。奴がポン酢ともみじおろしで食ってるのを隣でつまむとうまいのに、自分で食うとあんまりうまくない。アンキモに罰せられているようで、オレはますます不愉快になった。
 夕方になると雨が降ってきたので洗濯物を取り込んだが、そのころになってオレはようやく不安になってきた。角都は天候の変化に敏く、決して洗濯物を雨に濡らさなかった。オレとの生活に嫌気がさすことがあっても洗濯物を放っていくのは角都らしくない。
 もしやと思ってオレはひと月ほど前にカラスを見つけた場所へ行ってみたが、ちぎれた網が地面に捨ててあるだけで何もなかった。当然だ、角都が同じ罠にかかるわけがない。けれどもほかの場所に網が仕掛けてあったらどうだろう。そんな心配を今更しても、雨は降ってるし暗くはなるしでオレにできることは何もないのだが。
 ずぶ濡れて帰ってきた家はやっぱり無人で、淡い期待が裏切られたオレはしょんぼりする。角都は今日は友だちの家に泊まったのかもしれないカラスにも付き合いがあるんだろうと無理無理考えながらテレビをつけ、頭を拭いていたら、繁華街でたくさんのカラスが死んでいるというニュースが聞こえてきた。ここから十キロほどの町だ。角都が前に言っていた料亭があるところ。おいおい勘弁しろよ、とオレの口から声が出る。いやーひでー偶然だぜまったく、やだやだ、やめろっつーのこーゆーの、やめろよマジで。


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