ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

なくしたものは、もうなくならない(ss)



数日前に狩った賞金首が宝石の原石を持っていた。角都はそれをなくさないように気をつけていたが、今日の戦闘で石はとうとうどこかへいってしまい、どんなに探しても見つからない。オレらのコートも焼けちまったから今日の戦闘は丸損。オレは宝石なんかどうでもいいがこの寒い中コートがないのはこたえるし、角都が落ち込むのはもっと困る。とんでもない八つ当たりをされたり、最悪構ってくれなくなったりするからだ。今、角都は焼け野原でじっと動かずに立っている。あーあーキてんなァとちょっと離れたところから様子をみていると、ふと奴は顔を上げて目をオレに向け、おいそろそろ行くぞ、と言った。怒ってもしょげてもいない普通の声で。隣に並ぶと、寒いからもっと寄れ、とオレの肩に腕を回してくる。奴が何を考えているのかよくわからないが、めったにないことなんでオレもいそいそと奴の腰を抱く。やけにご機嫌じゃねーかと聞いたら、心配ごとがひとつなくなったからなと返された。わけはわからないままだがすぐそばにある顔はなんだか晴れやかだし、オレも嬉しくなってゲハハと笑ったんだ。