ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

自分という馬(ss)



石ころと砂しか見えない場所で、オレは相棒を待っている。幅の広いひものような道路がゆるくカーブして地平線まで続いている。太陽は真上にあって全然動こうとしない。落ち合う場所である傾いた看板の下だけ小さな日陰になっているが、空も地面もやたら明るくて、じっと道の果てを見ているとなんだか宙に浮いているような気がしてくる。少しだけ目をつぶり、また開いて道の果てを見る。その繰り返しだ。他にすることがない。そのうち黒い点が地平線に現れる。あまり期待しないようにしながらオレは点を凝視する。凝視しながら急にいろいろ考え始める。こんな場所を待ち合わせに使うなんてどうかしているとか、もしあれが奴ならオレがオレだってわかるはずなんだからさっさと走ってくりゃいいのにとか、でもけがしてたら嫌だなとか、いやいや奴に限ってそれはないとか、こっちの仕事の上首尾をどうやって話してやろうとか、でも奴はオレの腕を誰よりも知ってるんだから別に驚かねーだろうなとか。何を言おうか考えているうちに気がせいてきて、オレは自分の気持ちをなだめようとする。けど足の奴が気持ちを振り切って勝手に歩き出す。しょうがない、きっとずっと立っていたから動きたくなったんだろう。走りたがる馬は走らせるしかない。